エッセイ

分水嶺の南側とミシャグチさま

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C-9 市川 熹

この地区の様々な伝承は、この「諏訪大社」の神話と縄文時代からの神と思われる「ミシャグチ」が、後述するように神話時代から現在に至るまで様々に絡み合ったものになっているようです。本稿では、この視点を中心に紹介してゆきたいと思います。

しかし、話は複雑に絡んでいるので、初めに簡単に関係を整理しておきます。

先ずは、製鉄技術を背景としたと思われるヤマト朝廷と出雲、諏訪の勢力争いと思われる神話です。その結果として、諏訪大神と縄文時代からの地元勢力の古代の神「ミシャグチ」との平和共存が現在まで続き、諏訪大神を表に建てながらミシャグチが実権を持っていること、ミシャグチは霧ヶ峰の遺跡「旧御射山」と御射山社と関係が深いことがあげられます。また偶然だと思いますが、この神話は不思議なことに、日本の地学上の大きな構造である中央構造線とフォッサマグナとの関係が見出されています。中央構造線は大きく日本の地質を北と南に分けており、フォッサマグナは静岡から糸魚川の間を通る南北の大きな断層として有名です。両者は諏訪湖のところで交差しています。

さて、霧ヶ峰高原には「旧御射山(もとみさやま)」遺跡があります。諏訪大社との関係が深く、各地に御射山社がありますが、上社関連の御射山社はJR「すずらんの里」駅近くにあり、下社関係の御射山社は旧御射山から江戸時代初期に武居入に移されています(そのため「旧」が付くのでしょう)。

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