エッセイ

分水嶺の北側

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C-9 市川 熹

芦田から更に県道40号線を北に向かうと千曲川を超えて小諸に出ます。小諸には島崎藤村の「小諸なる古城のほとり、雲白く・・・」という詩で有名な懐古園があります。昔は小諸駅に半紙に筆で書かれた「熊に注意」という張り紙が時々見られましたが、最近がどうなのでしょうか。そういえば、その頃(約50年も前の学生時代)、友人が大石峠(すずらん峠)で熊にあったと逃げ帰ったり、蓼科牧場に捕獲された小熊が檻に繋がれたりしていた時期もありました。

千曲川には微笑ましい言い伝えがあります。

日本海に飽きた夫婦のクジラが小海の良さの噂を聞き、行こうということになりました。信濃川を遡り、千曲川に至ったのですが浅くなり、泳ぐのが困難になってきました。そこで一頭が横になって川の流れを堰き止め、もう一頭が水深の深くなった千曲川を泳ぎ、それを交互に行って登って行ったが、途中漁師に小海は海ではないと言われ、がっかりして日本海に戻ったという話しです。

南平からビーナスラインを左に行けば、三本松を経て白樺湖(昔は蓼科大池と呼ばれた灌漑用の人工湖。実際にせき止めた時に水に浸かった白樺が水面から出ていたので、白樺湖と改称された。その後決壊し、空気にさらされたため腐り、現在では湖面からの白樺は見られなくなった)、さらには車山、霧ヶ峰、鷲ヶ峰、扉峠、美ヶ原方面につながっています。白樺湖には冬は天然のスケートリンクがありましたが、遊園地や駐車場になってしまいました。

白樺湖から大門街道(国道152号線)を北に行くと、「仏岩」というところがあります。ピークには鎖やはしごを登る必要があり、東側は絶壁です。学生の頃後輩と出かけ、滑落しそうになったことがあります。

さらに街道を進むと、一昔は繊維工場で栄えた丸子を経て真田幸村などで有名な上田に出ます。上田周辺には別所温泉など数多くの温泉地があります。別荘地で見ることのできる地元テレビ局の解説者などに長野大学の先生を見かけますが、上田電鉄別所線の大学前にあります。社会福祉学部と環境ツーリング学部からなり、一度訪問したことがあります。信州大学の繊維学部も上田市にありますね。

白樺湖に戻り、車山方面に向かってみましょう。

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